最近、満足度基準という話を何度か社内でしました。これは完全を目指すため、一定のミス(起こり得る!)や、不完全を潰そうとすることにエネルギーを注ぎすぎることの副作用を指しています。例えば、7割が出席されていれば社内への「一定」の浸透と言えるという場合(満足度7割)、なぜ残り3割は出席しないのかに固執し、3割潰しに固執し、全員参加を義務付けたり、出席をとったり、欠席者の管理者を責めたりするルールを作ったりすることで(=仕事のための仕事を作る)、、他にもやることはあるのに資源(時間)の割当が全体最適を失うことです。
これはストレスの原因であり、満足度基準を持つ事はストレスマネジメントのコツにもなります。なので私は積極的に取り入れています。特に日本水準の事務を求めストレスだらけになった海外でとことん考え抜いて身につけました。「それぞれの価値観があり、日本のようにやらなくても、別に問題になるわけじゃない」。
子供たちにも話します。「試験で100点じゃない、誰かがお願いを聞いてくれない」・・・いいじゃない。80点で志望校に合格するなら。Aさんが聞いてくれないなら、Bさんにお願いすれば。最後、自分でやるか、それは一旦置いておくか。。。ワークライフバランスの徹底した海外で依頼事項が終わっていないのに17時にデスクを去っていく同僚を見て日本人価値観で勝手にストレスを起こしていた自分は悟ったのでした。
だからご存知ですか?日本の官僚組織では問題が起きるたびに徹底的な再発防止策を作るので仕事が仕事を作りがんじがらめになっているのです。一定の制約に基づく失敗を受け入れ自分の満足度基準を満たせばOKとする考えが合理的です。妥協することとは違いますよ。もちろん。
下記はノーベル賞を取ったサイモンの満足度基準に関する説明の抜粋です。ご参考までに。
限定合理性
サイモンはまず、人間が意思決定をするときの限定合理性について指摘しています。限定合理性とは何のことでしょうか。
人間は何か決断する時に、できる限り合理的に決定しようとします。
しかし、人間が行うことなので、どうしても情報不足や判断ミスなどがあり、完全に合理的な判断をすることはできません。これが限定合理性です。
人間はできる限り合理的に意思決定しようとするが、合理性に限界が存在するために、完全に合理的な意思決定をすることはできない、という人間仮定
この限定合理性が起こる原因は、主に次の二つです。それが「情報収集能力の限界」と「計算能力の限界」です。
どうしても人間なので情報収集能力に限りがありますし(情報収集能力の限界)、行動した結果を完全に予想することはできません(計算能力の限界)。
・情報収集能力の限界・・・意思決定のために必要なすべての情報を収集できない
・計算能力の限界・・・意思決定に基づいた行動の結果をすべて完全に予想できない
情報収集能力の限界、計算能力の限界は、私自身経験があるので理解するのに時間がかからなかったです。正直、目からうろこでした。
意思決定のプロセス
サイモンは意思決定のプロセスは①~⑥のようになっていると考えました。
①問題の認識
②代替案の探索(←情報収集能力の限界)
③代替案の評価(←計算能力の限界)
④代替案の選択(➡満足化原理)
⑤実行
⑥フィードバック(①に戻る)
前の章で話した限定合理性は、「②代替案の探索」と「③代替案の評価」の段階で働いています。
限定合理性の中、人間は満足化原理に基づいて意思決定をしているとサイモンは考えました。
満足化原理とは、意思決定に際して一定の目標水準を定め、その目標水準を達成できる代替案を発見した時点で、新たな代替案の探索を中止してそれを選択するという意思決定の方法です。
これだけだと分かりづらいと思いますので、1つ例を出して考えてみましょう。
あなたが車でドライブをしている途中、ガソリンが少なくなってきたとします。
あなたの目の前には、1ℓ150円のガソリンスタンドと1ℓ140円のガソリンスタンドが見えました。
本当はもう少し走ると、1ℓ130円のガソリンスタンドがあるのですが、あなたは1ℓ140円のガソリンスタンドで給油をしました。
1ℓ150円は高いけど、1ℓ140円なら妥当な線だろうと新たな代替案(1ℓ130円)を探すのを辞めたわけですね。
これが満足化原理です。
ここ勉強中に感動したとこです。満足化原理、本当にその通りだなと思います。
ゴミ箱モデル
サイモンの意思決定論では、限定合理性の範疇でできる限り合理的な意思決定を行う仮定を取っていました。
このサイモンの限定合理性の限界を克服するために、マーチ・オルセン・コーエンらが主張した新しい意思決定モデルが、ゴミ箱モデルです。
ゴミ箱モデルは、相互に独立した4つの決定因(選択機会、参加者、問題、解)があり、「選択機会(ゴミ箱)」に「参加者」、「問題」、「解」が流入流出を繰り返し、複雑な相互作用から偶発的に決定が下される、という理論です。
例を出します。
ゴミ箱モデルは、下の図のように「選択機会(ゴミ箱)」に様々な「参加者」が「問題」と「解」を投げ入れます。
そして「選択機会(ゴミ箱)」に投げ込まれた「問題」に対して、解決に必要なエネルギーが溜まった時に、あたかも満杯になったゴミ箱が片付けられるように「決定」が行われるのです。
これがマーチ・オルセン・コーエンらが主張したゴミ箱モデルという意思決定モデルです。