熱戦が続く甲子園で私もどハマりしている。そんな今回、「審判」が話題になっている。
6日、今大会の開幕戦となった国学院栃木(栃木)と日大三島(静岡)の一戦は、10-3と点差が開いた。球審の尾崎審判は試合後、両校がホーム前で整列すると、うつむく三島ナインに「大丈夫や、上を向け。甲子園で試合ができたことは誇りや。胸を張って終わります、礼」と声を掛けて試合を締めた。
さらに、12日に行われた八戸学院光星(青森)と愛工大名電(愛知)の2回戦では、延長十回、名電が劇的なサヨナラ勝利。今大会は6月に心不全で急逝した、チームメートの瀬戸勝登さんの思いも背負うナイン。試合終了後、勝利球を受け取った球審の金丸審判は、主将の有馬伽久(3年)に何事もなかったようにそっとボールを渡した。「勝登と共に」と頂点を目指すチームに、粋なプレゼントとなった。
また、13日の第1試合では、浜田(島根)と有田工(佐賀)の試合が行われた。ともに新型コロナウイルスの集団感染により、8日目に試合が組まれた一戦。5-3で浜田が18年ぶりの甲子園勝利を飾った。試合終了後、両校が整列すると球審の尾崎審判が「試合ができたのは奇跡。甲子園でプレーできるありがたさ、感謝の気持ちを持ってほしい」と選手に声を掛けた。
感動的である。言葉は言霊をもって人を震わせる。審判は中立な立場でジャッジする人の印象が強かったが、コロナをはじめ最近の高校生や高校野球を取り巻く環境がものすごく難しくなっている今、同様にロボットでなく人である審判の「声かけ」がそういう「難しさ」を溶かしてくれている。勝敗だけじゃない大事なことに焦点を当てて寄り添いがあってものすごくいいことだと思う。審判は中立だ、平等でないと、という意見もあろうが、審判の誠実さがある限り、そういった一定の裁量範囲があるのがなお人間的でいいと思う。
普段の仕事でも、無意識で素直にそうしたいという気持ちに正直に、(あえて言葉を選ばず)言霊を発したいと思う。